
1999年12月、第23回世界遺産会議(マラケシュ;モロッコ)において、 「日光の社寺」−Shrines and Temples of Nikko−が日本で10番目の世界遺産として登録されました。 登録内容は、建造物として103棟(国宝9棟、重要文化財94棟)にもおよび、緩衝地帯としては373.2ヘクタールにもなります。
「日光の社寺」は一般に「二社一寺」と言われている二荒山神社、東照宮、輪王寺で構成されています。
今回ご紹介するトピックスは、その中の二荒山神社に属する「神橋」の防腐・防虫工事です。 二荒山神社は、日光山岳信仰の中心として大己貴命(おおなむちのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、 味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)を祭神として崇拝されてきた神社です。神橋は、別名を「山菅の蛇橋」【やますげのじゃばし】といい、 日光開山の祖:勝道上人【しょうどうしょうにん】が大谷川の急流に行く手を阻まれたときに、青・赤2匹の蛇が現われ橋となり、 上人たちはその上に山菅を敷いて渡り、再び山頂をめざすことができたと伝えられています。 今回の工事は、日光の社寺全般の修復・保存等を担当している「社団法人 日光文化財保存会」から依頼されました。 弊社と当法人とは、文化財保存の分野で長くにわたりお付き合いさせていただいており、 日光山内の国宝・重要文化財等の防虫・防腐工事を数多く手がけております。

現在、神橋は大規模な修復工事が行なわれています。 前回修理を行なったのが約60年以上も前ということもあり、木部および漆塗りの劣化が著しく進行してきたため、 橋桁より上部を取り除く半解体修理工事を行なっています。橋板や高覧廻り木部をほぼ全面的に取り替え、漆の塗直し、 装飾金具表面の仕上げ直しなどを行なう予定とのことです。
今回の工事では、特に腐朽がひどい部分について、新材と古材を組合わせたり、 ステンレス板、カーボン樹脂による補強を行なったりしています。 神橋の修復工事にはこうした伝統的な技術と、最新の技術が盛り込まれています。

その中での弊社の仕事は、橋の木材部分を腐らないよう、 また虫の被害を受けないようにすることです。 工法としては、(1)木材部分への防腐・防虫剤の吹付け処理、 (2)橋桁接地部分への土壌処理(地面からの白蟻等の被害を防ぐ)の二つです。

日光の文化財は、こうした様々な技術により後世に伝えられていきます。 当社の技術もその中の一つとして文化財の保存に役立っています。